DXとは何か?IT化と何が違うのか?

昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が浸透してきている。IT業界に身を置く人は当然とし、IT業界とは無関係な人も一度は聞いたことがあるのではないだろうか。

最近では、河野太郎行政改革担当大臣(※2021年2月23日時点)もDXがめざすものに触れていた。

www.taro.org

とはいえ、DXという言葉は聞いたことがあっても、実際どんなものかわからない人が大半だと思う。私も数年前までは、IT化との違いがわからなかった。

そこで今回は、IT業界とは無関係な人もわかるように、IT化とDXの違いを噛み砕いて説明していく。

 

 

結論:IT化は既存業務の効率化、DXは新業務の創造

初めからクライマックス。

結論を先に書いてしまうと、

  • IT化は、ITによって既存業務の効率化やコスト削減を図ること
  • DXは、ITによって企業そのものや企業の提供するサービスを変えること

となる。

どちらもITを活用する点では同じだが、目指すべきゴールが違う。

 

実例をあげると、「固定電話を廃止してSkype導入したら、固定電話の分のコストが削減できたよ!」がIT化で、「人の電話対応をやめてAI導入したら、業務時間内のみの対応から24時間365日リアルタイム対応の新サービスになったよ!」がDX。

前者は業務で使用するツールが変わり、後者は業務内容そのものが変わっている。

 

DXの誕生

DXの誕生は、2004年にスウェーデンウメオ大学のErik Stolterman教授が提唱した時にまでさかのぼる。この時点では、DXの概念をメインに触れ、「ITが日常に浸透して、人間の生活をよりよくするよ」という感じのことを論じている。

原文(英語)は下記から読めるので、興味があればどうぞ。

https://www8.informatik.umu.se/~acroon/Publikationer%20Anna/Stolterman.pdf

 

DXは最近登場した言葉に思われがちだが、驚くことに、わりと古くからある言葉なのだ。

ちなみに2004年は、アテネオリンピックが開催されて、水泳金メダリストの北島康介さんの「チョー気持ちいい」が流行語大賞になって、新紙幣に野口英世樋口一葉が登場した年でもある。

 

日本のDXの定義

日本がDXを正式に定義したのはその14年後、2018年12月に経済産業省がまとめた「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」である。

その中で、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義している。

要するに、「ITを活用して、みんなが喜ぶサービスを作る企業になろう」という感じだ。何も難しくはないし、何も間違ったことは言ってない。

原文は下記から読めるので。興味があればどうぞ。

https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

 

IT業界で働く人へのDXの影響

現在、すべての日本のIT企業がDX企業となるために人と物へ投資していると言っても過言ではない。すべての日本のIT企業をこの目で見たわけではないが、過言ではないと言い切れる。たぶん。

そうなれば、DX企業になるために会社が変化していき、その会社で働く社員はその変化に巻き込まれてしまう。どうしてもその変化が受け入れられないというならば、その会社から去るしかないが、去った先の会社もいずればDX企業に変わっていくことは確定的に明らかなので、流れに乗ったほうがいいとは個人的に思う。

 

話を戻すが、IT業界で働く人は、DXによる影響を大きく受ける。なので、自社が目指すDXの姿というものをいち早く理解し、その変化に乗るために必要な情報と技術を身に着けることが重要である。幸いなことに、DXを実現するために必要な技術はたくさんあり、まだ椅子が満席な技術はないので、自分好みの技術を選び放題だ。

早めに自分の得意で興味のある技術の椅子に座り、その椅子の上からDXの旗振りができれば、DXの波も楽しく乗れると思う。

 

IT業界以外で働く人へのDXの影響

もし、「よかった、私はIT業界じゃないから、DX関係ない」と言っている人がいるならば、そんなことを言っている場合ではない。繰り返すが、DXとは「ITを活用して、みんなが喜ぶサービスを作る企業になろう」ということである。その企業には、当然、IT業界以外の企業も含まれている。

嘘だと思うなら、「DX 事例」でググってみてほしい。某食品会社や某医療会社といった、IT業界以外に君臨する会社の名前が出てくる。

 

今はIT企業が率先してDX企業になろうとしているが、最終的には業界問わずすべての企業がDXの波に飲み込まれることが予想される。そうなれば、働き方というのは確実に変わる。

例えば、ブログの最初に、IT化は固定電話がSkypeに変わることで、DXは有人対応から無人対応に変わること、という例をあげたが、まさにこれが起こる。

固定電話がSkypeに変わっても、働き方に大きな影響はない。使用するツールが電話機かパソコンかの違いで、やることは変わらない。しかし、電話対応が有人から無人に変わると、「電話対応」という業務がこの世から消滅する。結果、電話対応という業務をしていた人は、今までと全く違う別の業務を割り当てられることになるだろう。

 

そんな世界で生き残る方法は二つ。

  • 新しいツールを使って、新しい業務(サービス)を提案・開発
  • 次々割り当てられる別の業務を淡々と遂行

どちらが好みかは個人差があるので、自分にあう方へ進むのがいいと思うが、どちらにも言えるのは、何十年も同じことをやり続ける業務があった時代は、終わりを迎えようとしているということだ。

 

DXの果てに

危機感をあおるようなことを書いてしまったが、DXの果てにあるのは決して暗い未来ではない。人間じゃなくてもできる仕事はコンピュータがやり、人間がやりたい仕事だけを人間がやる。そんな未来が、DXの果てには存在すると考えている。

 

例えば、「会議前には会議室の準備をして、全員分の資料を紙に印刷して配り、会議の後には片付けをする」といった面倒くさい以外の感想がない業務は、オンライン会議というツールの前に消滅する。

もしかしたら、教師の「子供が好きだから教師になったのに、書類仕事ばかりで子供と接することができない。つらい」という業務内容も、「書類仕事はコンピュータが勝手にやってくれるから、子供とたくさん接することができる。幸せ!」に変わるかもしれない。というか、変われ。

 

おわりに

本記事では、IT化とDXの違い、そしてDXが働く人へ与える影響を書いた。

DXとは何かがざっくりと理解できた人が一人でも増えれば、私はとても嬉しい。